プレイバック / レイモンド・チャンドラー
プレイバック / Playback
レイモンド・チャンドラー / 訳:村上春樹
ハヤカワミステリ文庫・2018年09月
(早川書房・2016年12月)
チャンドラーの長編遺作こと『プレイバック』
発表したときには70歳になっていたらしく、よくその歳でまたハードボイルドを書けるよなあと感じ入ってしまう。
相変わらずプロットはミステリと呼べるギリギリのラインでガバガバだし、主人公マーロウもアラフィフになっていて若干くたびれているような。
ただ僕が読者として求めている要素はそこには無いので、今作もとにかく洒脱なチャンドラー節と村上春樹の翻訳、そしてマーロウのカッコ良さを存分に楽しめた。
マーロウのカッコ良さとしての、
- 女性に優しいところ
- 同性にはタフなところ
- 金に靡かないところ
- ルールを犯しつつ、ルールを尊重しているところ
みたいな部分が詰まった作品だと思う。
お金に靡かないところっていうのも、「お金に興味が無い」のではなくて「お金に関する真面目な話もジョークも出来るけれど、それに囚われない軸がある」って感じで良い。
「厳しい心を持たずに生きのびてはいけない。優しくなれないようなら、生きるに値しない」
というのはこの作品で1番人気の一節だけれど、そんな不器用な生き方こそ魅力的に映るものなのだ。
例によって損な役回りを買って出て散々な目に遭っているけれど、今作では割とスッキリした結末を迎えるし、マーロウ自身にもある種報われた?ような展開が用意されているし、良かったねって感じだ。
自分を曲げられない人たちは損なことも多いし上手く生きられはしないけれど、ハードボイルドをやっていけば少なくともモテはするかもしれないとマーロウは教えてくれた。やっていくしかない。
コメント投稿