東京の空間人類学 / 陣内秀信
東京の空間人類学
陣内秀信
発行:1985年
江戸から東京に至るまでの都市計画や町づくりについて色々な角度から書かれた本。
大学の教養の授業で買わされたのだけれど意味不明で、東京に来て地名とか分かるようになって読んだらおもしろかった。
文献や古地図、先行論文から東京を読み解いていくアカデミックな面もあれば、
作者は「ブラタモリ」のアドバイザーとかもやっていて、「街歩き」的な面から得た独自の気づきや視点も盛り込まれていて飽きない構成になっていた。
東京を山手線あたりの「山の手」と江東区あたりの「水の辺」に分けてやっていく論が新鮮で、確かに亀戸とかって本当に23区かっていう雰囲気があると思っていたけれどその謎が解けた。江戸時代からそうなら仕方ない。
あと家を買うならやっぱり台地に住むべきだなとか。高い土地には理由があるし、タワマンにはロマンがある(書いてない)
ヴェネチアの専門家でもある作者は東京が「水の都」でもあると強調していて、東京という都市は川や掘割に沿って文化が根づいてきたという話もおもしろかった。
それを聞くと神田川とか市ヶ谷の外堀沿いの街並みが新旧入り交じった感じに見応えがあって散歩していて圧倒的にやれがあるのも頷ける。
そういうモダンな都市計画が江戸の時点で行われていたのが驚きだし、さらに明治に西欧から取り込んだ文化も独自解釈して取り込んでいて、世界的にも類を見ない「東京」が出来上がっている。
日本人って(主語デカ)貪欲で、東京もまた貪欲な都市だという印象。
1番良かったのは「欧州から塔の建築を持ち込んだが、塔が果たす役割や文脈をよく理解していなかった日本人は時計屋が広告がわりに時計塔を建て始めた」って話だ。
こういう笑顔になっちゃう浅はかなところも良い。
コメント投稿