映画『夜は短し歩けよ乙女』の感想 (#417)
原作がすごく好きな自分にとって期待と若干の不安があった映画化なのだけれど、僕はけっこう好みの映画だった。
観ていると、このアニメーション作品は「何でもアリ」なんだな、と気づく瞬間があるのだ。
そこに至ってしまえば、このサイケな作品をサイケに楽しめるんじゃないだろうか。
序盤は、星野源の滑舌が怪しいな、とか、「乙女」の天然さを映像にするとなかなかエキセントリックだな、とか、いろいろ邪念が浮かぶのだけれど、文化祭でミュージカルが始まったあたりからは全てが意味不明にふざけまくっていてどうでも良くなってしまい、最後には笑顔が残されるという湯浅(森見)バプテスマだ。アジカンの主題歌もすごく良い。
決して万人受けする類いの映画では無いように思えるし、原作の人気から言えば商業的には「もったいない」ことをしているのかもしれないという気持ちもある。原作付きの映像化は原作再現度が高いほどファンは好意的に受け入れるからだ。
けれど、原作をこれだけ咀嚼して再構築したその勇気と狂気に僕は賛辞を贈りたい。贈っている。
巧みな言葉遊びや面白い表現。ポップだけどキレのある文体。読み始めてから30分でこの本のファンになった。
ほぼ同じできごとを2つの視点から語るだけで先輩視点は可愛そうで残念な失敗談となり、乙女視点はふわふわとした魅力溢れる世渡り談になる不思議。
「古本市」「学園祭」などという身近なテーマでありながら、現実と幻が入り混じった世界観(マジックリアリズムとかいうらしい)が確立されていてオモチロイ。
温かみがあって不思議な話と、黒髪の乙女の天然さ、「胸をむんとはる」「なむなむ!」といった独特の擬音、どれもこれもがお気に入り。
(一部抜粋)
あとどうでもいいことだけれど、中3のとき(原作を初めて読んだとき)の感想文が今の自分よりマトモな作文をしていてちょっと凹んだ。
ナるべくカこからメをそらして生きていきたい。
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