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神SF『三体』はオタクのハリーポッターなんだ (#606)

読書

『三体』をついに読み終わったぞ……!

これから「三体は神」という内容を2086文字かけて書きます。

ハードカバー5冊の超大作SFということで結構なリソースをぶち込まないと読み切れない作品なのだけれど、大ベット大勝利だった。

中国の小説ってどうなのよ、という部分は僕の気持ちでもあったのだけれど、劉慈欣はワールドクラスの天才で、それが中国人だっただけなのだという分かりを得た。

中国の作品であることは大いに内容に関わるけれど、それを理由になんとなく避けるのはあまりにもったいないと声を大にして伝えたい。

<!– ネタバレなし —>

スケールがデカい

三体の1番の魅力はそのスケールのバカデカさだと僕は思う。

宇宙を舞台に恒星と恒星を股にかける展開があり、コールドスリープで数世紀時間が飛ぶ展開があり、その圧倒的なデカさを科学でねじ伏せるぜというハチャメチャさが良い。

ところで恒星ってなんだっけというと我々で言うところの太陽なのだけれど、この銀河系には他にもあと2000億個くらい恒星がある。ヤバい。

そして銀河って我々のいる天の川銀河の他にもアンドロメダ銀河とかがあって、全宇宙には2兆個あるらしい。???

つまりこの宇宙には2000億x2兆個くらい太陽があって……という事実から成るSFです。

登場人物が強い

ホグワーツでは魔法が正義であるように、『三体』では科学こそが正義なのだ。

つまり『三体』はオタクのハリーポッターと言える。

科学ベースでロジカルに話が進むからこそ、研究者たちのワーカホリック気味な情熱だったり、警察や首脳陣のパワフルな行動力が映える。

それでいて各人物の行動原理はすごくシンプルで、共感すると同時に笑ってしまう。

「モテたい」「なんか気に食わない」「なんか可哀想」「目立ちたい」みたいな感情こそがやがて宇宙を動かしていくパワーなのだ。

というわけで

長編の小説を読む体力がある人には本当にオススメです。

物語のおもしろさで言えば僕の人生でもナンバーワンかもしれない。

そして読書の筋肉がない人にとっても、今ネットフリックスでドラマを作っているらしいからそれを観てください。おもしろいかどうかは僕にも分からん。

<!– ネタバレあり –>

1巻の感想

例によってあらすじを読まずに買ったから(SFということすら知らなかった)文革のシーンから三体ゲームの中盤まで全然意味不明でキツかった。

紅岸基地でSFなのだと分かりを得てからは汪淼先生とか大史のキャラの良さも相まってかなり加速したと思う。

けれど本当に1巻は序破急で言うところの序で終わったのは肩透かし気味だったし、ドラマ化するときにそのままやっても脱落者多数ではという懸念がある……

ワイヤーで巨大船を膾切りにするクライマックス、ドラマでウケますかね???

葉文潔はRPGであれば激ヤバの巨悪なのだけれど、ただの悪役として用意されたキャラではなくて1巻は文潔の物語だという構成も独特で良い。

説明無しでスターウォーズのep1から見せられている。

しかもアナキン・スカイウォーカーみたいなコテコテの悪堕ちではなくて、文潔自身が確固たる意志を持って全力で間違った道を走っているのが迫力があるね。

2巻の感想

「面壁者羅輯、ぼくがおまえの破壁人だ」

もちろん羅輯の造形もめちゃくちゃ良いし、三体陣営のヤバさや他の面壁者の作戦もおもしろい。

そして暗黒森林理論のギミックも鮮やかで、『三体』のおもしろさの8割は2巻が担っていると言っても過言ではないと思う。

けれど1番凄いのは智子にバレずにコード書き換えたハインズなんだよな……

羅輯と嫁のくだりは読んでいて「オタク〜〜〜」って叫びながら読むしかない。これを堂々と世界に発信できる劉慈欣大史には信頼感しかない。けどこれが面壁者としての作戦じゃないとは言い切れないからさ……

引き続き大史が地球のMVPだよ。汪淼先生どこ行ったん??

3巻の感想

程心さあ……。

それはそれとして、2巻みたいな文章を書くオタクが程心のようなキャラを描けることに驚く。

3巻は3巻でスケールがどんどん大きくなって、話はどんどん不穏になって、こちらが勝手に決めつけていた『三体』という器の大きさを超えてくるのが嬉しかった。

僕もオタクとしてウェイドは好きなキャラだったけれど、ずっとあんまりにもな扱いで凄い。チャップリンのかの名言のような人生ですね。我々の人生もかくありたい。

ホーアルシンゲンモスケンのくだりは謎解き感も出していたのに、最終的にあれか2次元化の警鐘でもあったんだ!っていうのは流石に三体人ガバすぎではとなってしまった。もうマジに地球に興味なくしてるじゃん。

万有引力が接近した4次元の文明もあんまり関係無かったり、ややとっ散らかってはいる。

けど元々世界の次元はもっとあったし光速はもっと速かったみたいな話はかなりSFっぽくて良かった。

無から沸き出した関一帆がラストシーンに出てくるの何アンド誰で笑顔になった。

まとめ

『三体』は神SFであり、劉慈欣大史はワールドオタク。

そして我々の人生も彼らのように、遠くから見れば喜劇になるのかもしれないですね。

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